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#約束#

   「その綺麗な大きい羽はどうしたの?」

黄土色のボロをまとった少年が不思議そうな目で黄色の小さな砂丘に横たわっている少年を見ながら聞いた。

この場所は広い海の中心部にある巨大な島の一角にある広大な砂漠である。

その島は大部分が水分の少ない砂でできた砂漠で覆われていて、人々はその島をデザートアイランド――砂漠の島――と呼ぶ。

デザートアイランドには集落とも町ともいえぬ集まりが数え切れるくらいあるのみだ。

なぜならこのデザートアイランドは夏になると摂氏四十五度おも越え冬でさえも厚着をしなければ肌が焼けてしまうからだ。

しかも風はあまり吹かなく極稀に突風が吹くぐらいなので、暑さを凌ぐにはそれ相応の知識と技術が必要となる。

「う…うん?!何?どうしたの?君は誰??」

恐る恐る目を開ける少年。

そしてぼやける視界の中にボロをまとった少年が飛び込んで来たので驚いて首を横にすると、砂が口の中に纏(マト)わり付き思わず咽てしまった。

その様子を見たボロの少年は少し口の端を歪めながら言った。

 「だから・・・君は誰?そしてその羽は何?僕の名前はジョイル」

ボロを着た少年が少し照れ臭そうに名乗った。

ジョイルはこの砂漠の近くのある所に住んでいる少年で、彼の目は海のように透き通った青色をしていた。

彼は恵まれているとは言えない唯平凡な家庭の長男(一人っ子であったが)として育ち、暇を見つけてはよくこの砂漠に遊びに来ていた。

そして一人で遊んでいると少年が倒れていた。

そして少年には翼が生えていたので声をかけた。

 「僕の名前?・・・・・・・分かんない。僕は・・・・誰?」

少年は頭を痛そうに押さえながらジョイルに聞き返した。その少年はジョイルとは違い目の色が少し薄茶色のぼやけたような目をしていた。

そして彼の目の奥には少し怯えたような、少し呆けたような感じが漂っている。

 「分からないの??記憶・・・・が・・・・無い・・・・の?」

少し驚き、少しためらった調子でジョイルが聞く。ジョイルは心配そうな面持ちをして返事を待つ。

 「・・・・記憶が無い?!そうかもしれない。起きる前の事が全然分からない。」

少年はおどけた面持ちで言うと頭を抱えて考えている。

 「どうしようか??見捨てることも出来ないし・・・・。じゃあ一緒に記憶を思い出そうか?」

困り果てたジョイルは少年に言った。そしてしばらく二人は黙って頭を抱えて腕の中に顔を埋めていた。

そしてどの位経ったか分からないが、少年は囁くような小さな声で

 「うん・・・・・・良いよ。じゃあ・・・・ヨロシクね?」

少し嬉しそうに途切れ途切れに答える。そして、ジョイルの透き通った青い目を見つめて返事を待つ。

そしてまた沈黙が続いているが、彼は全く目を逸らさない。

そして彼の黄色い羽は、少年がコントロール出来ないからだろうか無造作に広がっている。

 「うん・・・・これからはヨロシクね。どのぐらい時間が掛かるか分からないけどいくらでも付き合うよ。」

ジョイルは目が泳がせないように懸命に抑えながら力強く励ますように答える。

その返事を聞いた少年は目の端に小さな水溜りを作って少し照れ臭そうに短く、ハッキリと一言。

 「有難う――」

>    その後しばらく――とは言ったものの、他の世界ならばかなりの時間だろう――たった頃に、急に真剣な目になった少年はジョイルにこう言った。

 「僕は羽があるけど、飛び方を覚えていないんだ。だから僕は羽ばたき方も知らない。」

  顔を歪めながら背中に力を精一杯集中させ羽を動かそうとする。

しかし、いくら少年が顔を歪めても背中に在る翼は全く微動しない。

いくら力を入れても全く動かないその翼は、だらりと地面に垂れ下がって真っ白い羽先を地面にあるサラサラした砂が汚していた。

そしてしばらく見守っていたジョイルはとうとう見兼ねて口を開いた。

 「いくらやっても覚えていないんだから多分疲れるだけだと僕は思うよ?だから今日は寝床を探さなきゃ・・・・」

 「うん…分かった。今日はまず寝床とオアシスを探そう…。」

  二人は翼を動かそうとするのをひとまず諦めて、寝床と水を探そうとトボトボと歩き出す。――この島は日が沈みそうになるには時間がかなり掛かった。

このデザートアイランドは赤道付近に位置している為に日が長く、夕焼けで空が染まる頃にはもう北や南の国々や島はとっくに暗くなっている状態であった。

――なので、夕焼けが綺麗に空を染める頃には二人の足が重くなり砂丘を越えるにも一苦労だった。

そして懸命に重い足を上げて歩を進めていると、ジョイルの目にとんでもないものが飛び込んで来た。

  「ねぇ…僕の目が可笑しくなければ、あれって……湖と樹…だよね?」

  少し躊躇(ためら)った調子で、ジョイルが言った。

 「え!?僕にも見えるよ!やった!見つけた!」

  喜びで満ちたような口調で答え、ジョイルのほうを見た。」

「よし!!じゃあ、あのオアシスまで競争だ!よーい……ドン!!」

  言い終わると同時に駆け出してオアシスの方へ走っていってしまった。

しかし、タイミングを逃してしまった少年は、ジョイルにかなり出遅れてオアシスの方へ走って行った。

  

   一足先にオアシスに向かって駆け出したジョイルは息を弾ませながら、オアシスで後から走ってくる少年を待っていた。

 …そういえば、あの子は名前……思い出せなかったんだっけ…。

あの子がいいって言ってくれたら、名前を付けてあげようかな??

あの子を呼ぶ時に僕も困るし……。どんな名前が良いかなぁ……。

  ジョイルが考えているときに丁度少年が息を切らしながら、こちらに向かって走ってきた。

そして、

    「ずっ、ずるいよ、ジョ、ジョイル君。いっ、いきなり競争って言い出してはっ始めちゃうなんて……。」

    少年は悲しそうに、しかし、少し怒ったように息を切らしながら、途切れ途切れに言い終わるとジョイルの方を向いて返事を待つ。

 「…………うん!?えーっと、ゴメン…もう少し間をとってからスタートすればよかったね……ゴメン。」

   と何回も謝るジョイルにさすがの少年も笑顔になって許してくれた。

 「そういえば、さっきは何か考えていたようだけど何を考えていたの??」

  好奇心一杯の目を輝かせながらジョイルに聞く。

 「さっきは君の名前について考えていたんだ。

今更だけど、名前……付けてもいい?記憶が戻るまで…」

  少し遠慮しがちに少年に向かって言った。

 そして、しばらくの沈黙の後、少年が小さな声で返事を返した。

 「良いよ。記憶が戻るまでの間……。」

  了解の返事を照れ臭そうに言い終わると続けて、

 「どんな名前を付けてくれるの??」

   少年はジョイルに聞き返す。

 「えーと……サウロなんてどう?」

「うん…いいよ。有難う。そういやアリガトウは二回目だね?」

 「うん。二回目だね。僕の事はジョイルで良いから。」

 「うん分かった。ジョイル…。僕はサウロって呼んで?」

 「分かった。」

 「ねぇジョイル…。」

 「ん?何?サウロ…。」

 「僕疲れちゃったから寝るね……ふわぁ…。」   眠そうにサウロは言い終わると、つるで作ったハンモックで寝てしまった。

サウロの寝顔を見たジョイルは、自分も眠くなったので今日は寝る事にした。

 
翌日、小鳥の囀りと朝の空気の冷たさでジョイルは目を覚ました。

そして、ジョイルはぼやけた視界の中でサウロを見つけた。

サウロはまだ曙空だというのに熱心に薪集めをして火を起こそうとしていた。

ところがサウロは薪を集めるだけで、火を点けようしない。

そしてしばらくまきをせっせと集めるサウロを薄目で見る事にした。

しかしいくら待っても薪を集めるだけのサウロを見ているのは少し心が痛いので、ジョイルはとうとう起き上がりサウロの方へ走って行き、今はもう大きな倒れた樹を集めているサウロに声を掛けた。

「おはようサウロ。さっきから薪を沢山集めているけど火は点けないの?」

ジョイルはかなり不思議そうな顔でサウロに向かって少しだけ眠そうに聞く。

「うん、おはよう。僕が火を点けずに何故薪を集めているかだって?その答えはね。

火自体は覚えていたんだけどその火の起こし方が思い出せない……つまり、肝心な火の起こし方を忘れちゃった、ってことだよ。

だからジョイルが起きて来るまでよく燃えそうな樹と枝を集めていたんだよ。」

サウロは説得力の在る変に力強い声色でジョイルに言うと、今運んでいた大きな樹をまたズルズルと引っ張り、沢山の倒木がある場所に向けて歩き出した。

何故サウロが火を起こさずに樹をひたすら集めているかを分かったジョイルは、サウロの元へ駆け寄ってその大きな樹を運ぶのを手伝った。 しばらくしてジョイルはサウロに

「僕お腹空いちゃったから、火を起こしてご飯を食べようよ。」

「うん。僕もお腹空いちゃったから火を起こして……くれる?」サウロが言った。

「サウロもお腹空いたんだ…。じゃあ火を起こすから見ていてね?

あっ後、サウロは自分の羽が燃えないように注意しておいてね?」

   ジョイルが言うとサウロは慌てて羽の方を見て、二、三歩位後ろに下がった。

その様子を見たジョイルは火を起こすために、木と樹をもの凄い速さで擦り合わせている。

それを見て

(穴があくかも……)とサウロは思った。

  口をポカンと開けているサウロをよそに、ジョイルは何も気付かない振りをして黙々と木を擦り合わせる。

しかし、幾ら慣れているとはいえジョイルは、擦り合わせている手を休めて樹を見てみた。

「ありゃっ……起こそうと思って擦っていたらいつの間にか樹に穴があいちゃってる。」とジョイルが言った。

「ははははは。ジョイルがさっきまでカッコイイと思ったのに、こんな失敗するなんて。思っていなかったよ。

じゃあ僕がやってみるよ、良い?やってみても。」

サウロは腹を抱えながら苦しそうにジョイルに聞いてみた。

そしてしばらくジョイルは考えた後、

「まぁ、うん………いいよ。出来るなら……。」

「うん…分かった!じゃあ、やってみるね?見ててね?絶対点けてみせるよ。」

 サウロは張り切って近くにあった木の棒を掴み、さっきジョイルが穴を空けた樹の上に乗せて―見様見真似であったが―回し始めた。

ところがサウロは闇雲に回しているだけなので、しょっちゅう樹からずれて宙を―サウロの回している木の棒が―舞っていた。

しかも、熱心にやっているのでジョイルは何も言えずに居た。

しかし、しばらくジョイルはサウロが格闘しているのを黙って見ていたが、差宇賀のジョイルですらお腹の虫が鳴き始めたので、サウロの代わりに、ジョイルが代わって火を起こした。

そしてその後二人で仕事を分担しながら少し遅い朝ごはんを食べ寛いでいると、

「サウロさっきの事はあんまり気にしないでね?やっぱり最初は誰だって出来ないよ。

それに僕だって昔―といっても二、三年前のことだが―は全然出来なかったもん。」

「そっか……そうだよね??誰だって最初は出来ないよね?それにジョイルだって失敗したし……。」

サウロは少し意地の悪そうな笑みを零しながらジョイルに言った。

「うっ………その話は置いといて、火の起こし方を教えてあげるよ。

サウロが火を熾こせると、朝早く僕が起きていない時でも寒さを防いだりできるし。」

「……冗談、冗談。」

サウロが慌てて付け足した。

「僕に火の起こし方を教えてくれるの??本当に??」

「うん、いいよ。じゃあ今から教えてあげるよ。」

「やったぁ〜〜〜これでジョイルが居なくても寒さを凌げるぞ。じゃあ教えて、教えて、火の熾し方を。」

 飛び跳ねながらサウロは早く習いたくてジョイルを急かす。

しかしジョイルは、急かされているのに全く動じずにサウロが飛び跳ねているのを観察していた。

なぜなら近くに倒木があるのに喜びの余り倒木が見えないでいるサウロが、倒木につまずき、転んでしまうのではないかという心配事をしていたからだ。

そして案の定、サウロは倒木に気付かずに大きく転倒してしまった。それを見たジョイルは思わず吹き出してしまった。

「ブゥッ……アハハハハ。」

「何で笑うのだよぉ〜。」サウロが少し不満そうに言う。

「だって……サウロが……アハハハハハ。」ジョイルが苦しそうに笑いを堪えながら言った。

「あは……あははは。なんか転んだ僕も可笑しくなってきちゃった。」

「あははは。ねっ?やっぱり面白いでしょ?」

「うん、面白い。なんか……あれ…あれだよ……なんだっけ?」

「お約束?」

「あっそうそう。お約束のネタみたいだから自分でも…プププ。」

そうして二人はしばらく笑い転げ、おさまった頃再び二人の顔が合い思わずまた笑ってしまった。

そして涙目になりながらサウロが言った。

「そういえば、火の起こし方を教えてくれるんだったんだよね?いつやるの?」

「あっ、ゴメンゴメン。……じゃあ今からやろうよ!!」

「よし、やろう。」

「まずは、枯葉とかのよく燃える奴を穴につめる。こんな風にね?」

「うん。続きをやって?」サウロが言う。

「そして木の棒をまっすぐにしながら木の穴の中で回す。」

「うん、分かった。続きをして?」

「え〜と、次は、ひたすら木の棒を回して、煙が出てきたらすばやく燃えるものをくっつけて火をつける。」

「うん、分かった。次。」

という風にジョイル主催の火熾し講座は、お腹の虫が鳴き始める頃まで延々と続いた。

そして、ジョイルの苦労もあって試行錯誤の後、サウロは何とか焚き火が出来るようになった。

その後、お腹の虫がうるさく鳴いているのでジョイルとサウロは、その火を使って夕食にする事にした――。

そして、お腹が一杯になったので、段々と二人は眠くなってくるのを感じて二人共この砂漠に在る小さな熱帯雨林――オアシス――の中にある

寝床―というもののやはり、

寝心地の悪いハンモックであった―で横になり深い夢の世界へと入り込んでいった。


 翌朝。ジョイルは暖かい光を目の裏に感じ、目を開けてみた。

すると、サウロが自分で朝ごはんを作っていた。さらに、ジョイルが驚いたのは、自分の分までがきちんと作られていた事だ。

「どっ、どうしたの?サウロ。僕の分まで朝ごはんがあるけど……。」

 目をパチクリさせながらジョイルは、薪をくべているサウロに向かって言った。

「どうしたの?って、何故僕がジョイルの分の朝ごはんを作ったかってこと?」

サウロは薪をくべている手を休めジョイルの方に目をむけ言った。

「うん、そう。何故僕の朝ごはんを作ったの??」

「何故って、それは……火の起こし方を教えてくれたからそのお礼にと思って作ったんだけど、食べてみてよ。

って言っても唯の野うさぎの丸焼きなんだけどね。」

「ん〜でも嬉しいなぁ・・・・・いただきまぁ〜〜す」

その辺りにある大きな葉での上に乗った野うさぎの丸焼きを手で掴み、歯で食い千切って美味しいよ≠ニ言いながらひたすら噛む。

その様子を心配そうに見ているサウロの顔には安堵の気持ちが表れている。

そしてその後、サウロも野うさぎを顔に近付けて一緒に食べ始める。

ところがもうすぐジョイルは食べ終わりそうな様子で、骨にしゃぶりついている。

なので、急いでサウロは口に運び始める。

ところが、サウロは急ぎ過ぎたのか、今度は咳き込み始めた。

サウロがいきなり咳き込み始めたので、骨を木の枝で擦っていた手を止めてジョイルは勢い良く顔を上げて言った。

「サウロ!!大丈夫??何があったの??」

「ゴホッ、ゴホッ、うん、だっ・・・丈夫。カハッ、コホッ、コホッ。」

「そう・・・かな??大丈夫そうには見えないけど・・・。」

「コホッ、コホッ。本当に、大丈夫。

ただ、コホコホ。肉が、首の・・・・所に、引っ掛かった・・・・だけ、だから、大丈夫だよ。有難う心配してくれて。」

サウロは首の上の方を押さえながら、ジョイルに言った。ジョイルはサウロの手が覆っている場所を見て即座に分かった。

「そこの場所は喉≠チて言うんだよ。覚えておいてね?」

「の・・・・・なんとか??えっ?何それ・・・。教えてくれない?」

キョトンとした顔でサウロはジョイルに聞いた。その質問にジョイルは少し戸惑った様子で、目をサウロから背けて黙り込んでしまった。

そして、しばらくの間ジョイルの唸り声と沈黙が交互に続いた。

その時間は二人共相手を気遣ってかお互いに口を開きかけるが、声を喉から出そうとしない――唸り声が声としないのならばの話だが――。

もちろん、その長い時間とは他の世界でどのぐらいなのかも分からないぐらい途方も無い時間であった。

そしてその時間が終らせるべく、深く考えていたジョイルがサウロの目を見ながら口を開いた。

「うーん。分かったような気がする・・・・・・。確か、口があるでしょ?」

「う・・・うん。」

「その奥にある奴だよ。つまり・・・・声が出るところかな?」

「へぇ〜そうなんだ。{本当は良く分からないけどこれは秘密。あはは。}」

サウロが一人でニヤニヤしているのでジョイルは不思議そうな目でジョイルは見ながら聞いてみる――もちろん、サウロは自分の口端が笑みで歪んでいるのを知る由も無い――。

「どうしたの?サウロ。なんか笑っているような気がするんだけど・・・・。気のせい・・・かな?」

「・・・・・・え!?気のせい気のせい・・・・・。喉かぁ〜・・・・。」

慌ててサウロは答えたのでジョイルは{これは何かあるな。}と思ったが、態度には出さずにそのまま話を流した。

一方、肝心のサウロの方は上の空で空を見上げている。その空は青く輝き、太陽光は大きな椰子の樹で適度に遮られている為に余り強く感じない。

ところが、日差しは遮られているものの、ムワッとする熱風が木々の隙間から吹き抜ける。

そしてその風が、各々の肌に汗を作らせていく。この天候はこのオアシス特有の気候であったが、水が豊富であるので何とか乗り切れる。

水はこまめに摂取している二人だが、水を飲むだけでは最も日高く登る頃にはその分のみだけでは体温調節が間に合わない。

そして、今日は今までに暑く、二人の表情は誰が見てもとても暑そうである。

体中から汗の噴き出している二人は顔を見合わせてから何故か走りだした。

そう・・・・二人が向かっているのは紛れも無く水面がきらめく大きな湖へ向かって走っているのだ。

おそらく二人はこの暑さに耐え切れずに駆け出したのだろう。

そして、いつの間にか湖が二人の近くに迫っており二人は我先にと地面を蹴っている足に力を入れる。

「よーし。どっちが綺麗に湖へ入れるか勝負だぁ〜。」とジョイルが言った。

「え?・・・・・・・・分かった。じゃあ・・・・・僕が後に―――。」

サウロが重要な部分を言おうとしているのを遮ってジョイルが声を張り上げて言った。

「じゃあ先にサウロ飛び込んで!!!???

僕はサウロが飛び込んだ後に飛び込んで、僕がゆっくりとサウロの飛び込みを見られるようにしよう!!良いでしょ??」

「え・・・・・・・・。良いよ。でも、その良い方はまるで僕が出来ないみたいな言い方だなぁ。

もしかして・・・・・・僕が出来ないと思っているんでしょ??」

サウロが少し、むくれた顔付きをしてジョイルに聞いた。

「そんなつもりは無いよ。ただの・・・・・もぅ良いじゃん!!早く入ろうよ。もう汗が凄い・・・。」

全身から噴き出している汗を手で拭いながらいた。

「じゃあ。ヨーイ・・・・・・ドン。」

準備もしていないサウロにジョイルはスタートの合図を送る。そして、サウロは大きな水飛沫をあげて不恰好に飛び込んだ。

サウロが大きな音を立てて飛び込んだ湖面にはかなり大きな波紋――といっても小さな波程度の大きな物であった――が出来ており、

飛び込む様子を見ていたジョイルは可笑しそうに腹を抱えて、声が口の外に出ないように懸命に抑えている。

それを見たサウロは再び虫の居所が悪いようだ。

「ジョイルどうしたの??僕が失敗したのが可笑しいの?」

「ううん、違う、違う。サウロが飛び込み方を忘れていたのを忘れていたよ。御免。悪気があったわけじゃないよ。」

そんな事を言ったジョイルの悲しげな顔を見て、サウロは短く溜め息をついた後に口を開く。

「そっか・・・・悪気は無かったんだね?なら良かった。僕は意地悪で言ったのかと思っちゃったよ・・・。

僕も・・・御免。でも、気持ち良いよ。こんなに暑いんだもん。まさに――。」

「不幸中の幸い。」

ジョイルが言葉に詰まったサウロへ助け舟を出した。

「――不幸なんとかだよ。本当に気持ち良いよ。」

「うん。まさに地獄に仏だよ。」

「えっ?何それ。じご?」

サウロが困惑した顔でジョイルへと聞き返す。

「あっゴメン分かんなかった?」

ジョイルも気付いたのか慌てて聞き返す。

「うん・・・・・全く分かんない。分かり易く教えて・・・・・くれないかな?」

「もちろん。分かり易くかぁ・・・うーん・・・。えーとね。ジゴク ニ ホトケ って言うんだよ?」

ジョイルが地獄に仏の部分をゆっくりとはきはきした声で言った。それにつられてサウロも反復して呟く。

「ジゴ・・・ク・・・ニ、ホトケ?ジゴク ニ ホトケ。ジゴク ニ ホトケ!?」

「うん、そう!地獄に仏。」

ジョイルが嬉しそうに言う。

「地獄に仏・・・・かぁ。どんな意味だろう・・・・・。」

とサウロが呟いて口の中で言葉を転がすのを聞きながら、ジョイルは意味が分からないと言うのを聞き逃さずにこう言った。

「地獄に仏っていうのは――。」

「えっ教えてくれるの?」

「うん。確か・・・・えーと。まるで地獄のような、なかでも神様が助けてくれるって事。

つまり、この砂漠の中で雨が降るって事・・・・・・かな?」

「ふぅん・・・よく分かんないけど、そう言うことかぁ。」

サウロが曖昧に答えた。それはそうだ。二人共この言葉の意味は分かっていないだろう。

この二人は日本と言う国があるということすら分からないからだ。

「じゃあ泳ぎますか?」とサウロが言った。

「うん。こんな難しい話は嫌だもん・・・・。じゃあ、泳ごうっ!」

サウロが頭を手で押さえながら言った。

その後、二人は疲れ果てて――無理も無い。あれだけ、はしゃいだら疲れるのは当たり前だろう――ハンモックで寝入ってしまった。

翌日、二人はいつものように朝食を食べながら話をしていた。すると、ジョイルが真剣な口調でサウロに言った。

「今日は、サウロが空を飛べるように練習をしよう。僕はサウロが飛んでいるのを見て見たいなぁ。」

「僕も・・・飛びたい。この羽を使ってあの空を自由に飛びたい。ところで、練習って言っても何をするの?何か良い案でもあるの?」

サウロは眼を背中にある大きな翼へと移してからジョイルの方を見て、聞いた。

「うーん。とっ、とにかく羽を動かすイメージから作らなきゃ。」

ジョイルにそう言われたサウロは唯黙ったまま頷いた。

その後、二人は朝の涼しい風の吹いている砂漠へとオアシスから出て早速練習に取り掛かる。

「じゃあまずはサウロの羽を開かなきゃ。」

といってジョイルは縮こまったサウロの翼を開こうとする。しかし、バチッという音がしたかと思うとジョイルが砂漠に倒れている。

そう、ジョイルはサウロの翼に反撃されたのだ。ところがめげる事無く、ジョイルはサウロの翼を開こうとする。

それを感じているサウロは、協力しようと翼に力を入れる。

ところがそれは逆効果となって余計にジョイルへの反撃を強くするという結果になってしまった。

そこでジョイルは痛む傷を擦りながら提案した。

「あの・・・さぁ。協力しようとしてくれているのは嬉しいんだけど、できればもっと力を抜いてくれるかなぁ?」

サウロは耳を真っ赤にして翼の力をゆっくりと抜く。そして翼の力を抜いた瞬間、今までの事が嘘のようにすぐに翼が開いた。

そして後ろで奮闘していたジョイルはというと驚いたような、がっかりしたような顔をしている。

「ねぇ・・・・翼・・・開いちゃった。」

「本当?!じゃあ後はヨロシク。お任せするよ。」

「うん分かった。じゃあ任せられるよ。」

とジョイルは意気揚揚にいうと今度はジョイルの翼をゆっくりと動かす。そして、羽ばたいているような状態にしている。

その様子に気付いたサウロは後ろに居る見えないジョイルに言った。

「ん?何・・・してんの?なんか、羽が動いているような感じがするんだけど・・・。」

「えっ?あっ今?今はね、翼を動かしてこの動きを筋肉に覚えさせようと思って・・・。」

「へぇ〜そっかぁ。これで覚えられると良いね?」

「うん。じゃあ続けまぁす。」

「宜しくぅ〜。」

そしてジョイルは作業に戻る。その後ジョイルは、陽が登ってくるまで続けた。

さらに、陽が沈む頃、二人は朝の作業を再びする。そして、その後暫くはその生活が続いた。

もちろん、たまにサウロが誤って翼の筋肉に力を入れてしまいジョイルが怪我する事があった。

ところがジョイルはそんな事にもめげずに、いつものように作業を繰り返す。

そしてジョイルたちが作業を始めてから十二回陽が昇ったその日、サウロは自力で翼を動かせるようになった。

ところが動かせるだけで未だに飛べない。

「良かった。自分の力で羽ばたけるようになって。」

ジョイルは大喜びで言った。

「うん・・・・ありが・・・ううん、まだだよ。だって僕たちの目標は空を自由に飛べる事でしょう??だから僕はまだ余り満足はしてないよ。」

「う・・・・・・うん。そうだね?僕たちの目標は空を飛ぶ事。羽ばたく事ではないんだよね。」

「うん。」

「じゃあさ、その目標目掛けて練習しよう。」

「うん」

サウロは返事をしたが何故か鼻声だ。サウロの鼻声が気になってジョイルはサウロの顔を覗き込む。

そしてジョイルは、サウロの顔を見て驚いた。なんとサウロの眼からは大粒の涙がこぼれ落ちていた。

不安になったジョイルは恐る恐るサウロに聞く。

「サウロ。どうして泣いているの?何か嫌な事、言った?言ったのならゴメン。」

「う、ううん。ジョイルに・・・嫌なことを、言われた、訳ではないよ・・・・・。

唯、ジョイルの・・・・何気ない言葉が・・・・嬉しかった、だけだよ。」

「・・・・そっか。じゃあ傷ついて泣いた訳じゃ無いんだね?」

「・・・うん。」

「そっか、良かったぁ――。」


そして、翌日。ジョイルは寝坊してしまったのか、サウロのハンモックにはサウロが居ない。

それに、焚き火の薪がほのかに煙を上げていた。

「ん〜サウロ?何処行った?」

寝起きの体を動かしながら湖やハンモック周辺を探す。

そして何処にもサウロが居ないので不安になったジョイルは、一つの場所が思い当たった――。

「そうだっ!練習していた場所に行ってみよう。」

と一人で言った後、ジョイルは練習していた砂漠の場所へと駆け出す。

白みかけた空を見上げながらジョイルは疾風のごとく走り、練習していた砂漠へとたどり着く。

そして肩で大きく息をしながら顔を上げる。すると、そこには衝撃の光景が広がっていた。

それは何かというと、なんと、白みかけた空を自由に飛んでいるサウロが居たのだ。

それを見たジョイルは眼が飛び出るかもと思うぐらいビックリし、優雅に空を飛んでいるサウロを眼に穴が開くほど見詰めている。

そんなジョイルに気付いたのかサウロが笑顔をジョイルへと向ける。そしてサウロはゆっくりと旋回し、ジョイルの元へとしなやかに着地する。

するとジョイルがサウロに飛びついて言った。

「おめでとう!!空を飛べるようになったんだね?」

「い、痛いよ。ジョイル。」サウロが痛そうに顔をしかめて言った。

「あ・・・・・ゴメン。」

そう言うと、ジョイルは手を離して一歩下がる。

「でも・・・・おめでとう。」

「・・・・・うん。」

照れ臭そうにそう言うとサウロは眼を伏せた。そしてサウロの耳はほのかに赤い。

その赤い耳を誤魔化すようにサウロは言う。

「ジョイル。折角僕が飛べるようなったんだから、一緒に飛ぼうよ。」

「えっ?僕が飛ぶって?」

「えっと・・・・僕がジョイルを支えてあげるから一緒に空へ行こうって事。間際らしくてゴメン。」

「ううん良いよ。僕が変な解釈をしたのが悪いんだから。

」 「そっか・・・・ところで一緒に飛ぼうよ。」

「うん。飛ぼう。じゃあ、どうすれば良い?」

「じゃあ僕の手の中に入って。」

サウロは両手を広げてジョイルを誘う。そしてジョイルはサウロの腕の中には居ると空を見上げてサウロに言う。

「お願いします。」

「御願いされます。」

とサウロは笑いながら言うと両翼を激しく羽ばたき始める。

その羽ばたきによって発生した風は、その砂漠のサラサラとした砂を舞い上がらせている。

まるで砂のボールに覆われた二人はゆっくりと地面を離れていく――そう、彼等はもうすぐこの冷えた空を飛ぶのだ――。

そして一メートルぐらいだろうか浮いたとき、サウロはより一層強く羽ばたいて体勢を変える。

今、サウロ達は横向きで斜め四十五度で上空へと登っていく。意気裏か登ったところでサウロがジョイルに言った。

「飛べた事が嬉しいからって暴れないでね?命綱もつけていないんだから。」

「うん。絶対に暴れない。結構というよりかなり怖いけど絶対に暴れない。約束するよ。」

「怖いの?だったら降りるけど・・・・。」

「うん・・・・・怖い。じゃあもう少ししたら下ろしてくれるかな?高いのは苦手だけど、ココは綺麗なところだから。」

「やっぱり怖いんだ。あはは。ココに居たい気持ちも分からなくは無いけど、残念ながら無理だよ。」

「えっなんで?もっと居たいよ。」

「何故って・・・・・もうすぐ陽の出だ。陽が出てきたら暑くなるだろ?そして、暑いと僕の翼は耐えられないんだ・・・・多分。」

「へぇ。じゃあ何故、地上で陽に当たっても平気なの?」

「そっ、それは・・・。空は太陽に近いからじゃないの?」

サウロはジョイルの前に下りて来たときみたいに、ゆっくりと旋回しながら言った。

]もちろんサウロ達は着実に地上へと下りて行っている。

「そっか・・・成程。じゃあ・・・・昼間は飛べないってこと?」

ジョイルが残念そうに言った。

「うん・・・・・・・残念ながらそうなんだよ。・・・・・多分。」

サウロも残念そうに言った。それと同時にサウロ達は地面へ着地した。

今、ジョイルはまるで抱っこされているような格好で、サウロが落ち着くとすぐさまサウロの腕の中からすらりと抜ける。

それを見たサウロは

「どうしたの?そんなにも急いで僕の腕から逃げなくても・・・・・。」

「いや。何となく。傷付いたなら謝るけど?」

「嫌。傷付いた訳じゃないから謝らなくても良いよ。それに早く羽を冷やさなきゃ。」

「羽を冷やす?何故、冷やすの?」

不思議そうな顔をしたジョイルがサウロに聞いた。

「良く聞いてくれたね。何故って、ジョイルを持って飛んだら根元が熱いんだよ。だから冷やさなきゃ・・・・。」

サウロは既に、湖目掛けて走り出していた。ジョイルが呼吸を乱しながらサウロに言う。

「サ・・・・サウロは・・・ハァ・・・人間なの・・・・・かなぁ?・・・ハァハァそれとも・・・ハァ――。」

「何を言うんだ!僕はどっからどう見たって人間だよ。」

「うん・・・・ハァ・・・・そうだね・・ハァハァハァ・・・ゴメン。」

ジョイルは立ち止まってから大声で言った。ところが内心はこのような事を思っていた。

{こんな勢いで走って何故息切れしないんだろう。その時点で人間ではないと思うんだけど・・・まぁいっか}

勿論、このような事は口が裂けても、とても言えない。

なので、ジョイルはサウロには言わずに謝ったのだ。そして、そうこうしているうちにサウロは湖で浮かび、翼の根元を冷やしている。ジョイルも急いで湖の近くへ寄り、

「フゥ。羽の・・・・根元は平気・・・・・・なの?」

ジョイルは走った直後なので一息ついてから、途切れ途切れに言った。

「アー気持ち良い。うんっ?あっジョイル。うん、羽の根元は平気だよ。」

「そっか・・・・ならよかった。」

ジョイルは言った後、サウロを上の空で見詰める。そんなジョイルに気が付いたのか、サウロが聞く。

「どうしたの?僕の顔に何か付いているの?」

「付いている訳じゃないけど・・・・質問をして良いのかなぁと思って・・・。」

「うーん・・・。良いよ?」

「そっか。やっぱり駄・・・え?良いの?」

「うん。良いよ。多分・・・・良いよ。」

「そっか・・・じゃあ質問。ジャジャン」

「あはは。うん。」

「サウロ。サウロは記憶を思い出せたの?」

「へっ?記憶?・・・・うーんと多分まだ思い出せてない。」

「・・・・・そっか。思いだせると良いね?」

「・・・・そう・・・かな?僕は思い出せなくても良いと思ってる。ジョイルと今、居られる事が嬉しいから。」

サウロは嬉しそうでいて、恥ずかしそうな顔をして言った。

「そっか・・・・有難う。僕もサウロと一緒に居られる事が嬉しいよ。」

ジョイルも同じような顔で言った。

「今日は暑いね・・・・・。」

ジョイルが前触れも無しに言った。

「えっ?うん・・・暑いね。」

「暑い日はご飯、何が良いかなぁ?」

「ご飯かぁ・・・・あれは?焼き魚。」

「あっ良いかも。」

と言うとジョイルは、何処かへと行ってしまった。一人の取り残されたサウロは大きな欠伸をして自分のハンモックへと寝転がる。

そして、夕焼け色に染まっていく空を見上げる。

{明日は雨かなぁ。空がやけにオレンジ色だ。あ・・・・雨対策しなきゃ。}

サウロはそう思い、ハンモックの上にあった椰子の樹の葉を一纏まりにする。

そして、ハンモックが樹に繋がっている所も、きちんと大きな葉で水が来ないようにする。

そこへジョイルが魚を両手に持って帰ってきたそして、サウロのハンモックを見て言う。

「ただいま、サウロ。何をしているの?」

「えっ?何って雨対策だよ。」

「雨・・・・対策?明日は雨が降るの?」

「うん。明日は雨が降るよ。だから準備をしているんだよ。」

「そっか・・・・・・。ところで、何処で分かったの??」

「ええと、あの空あるでしょ?」

サウロが空を指差して言った。そして、ジョイルはその指先の先にあるオレンジ色に輝く空を見て小さく頷く。

「あの空がオレンジ色だから明日は雨。そうでしょ?」

「あはは、それは違うよ。オレンジ色の夕焼けは明日晴れ。」

 笑いながらジョイルが言った。

「そ・・・・そうなの?準備しちゃった。あははは・・・・・。」

一緒にサウロも笑い出す。そして、サウロは笑いながら雨対策の葉を一枚ずつ剥がしていく。

一方魚を両手に持って笑っていたジョイルは、火を熾して夕食の準備をする――夕食とはいったものの、焼き魚のみであったが――。

葉を片付け終ったサウロは、ジョイルの焼いている魚の匂いに誘われてジョイルの隣に腰掛ける。

「もうすぐ焼けるからもうちょっと待ってて、美味しく焼けてると良いなぁ。」

サウロの気配に気付いたジョイルは、サウロに言った。

「うん、分かった。もうすぐだね?ジョイルは料理が上手いから美味しく焼けるよ。今までの焼き魚だって美味しかったもん。」

待ち切れないとでも言うようにソワソワしながら嬉しそうにジョイルに言った。

「ふふっ、有難う。ところでサウロ。待ってるって言ったけど本当に待てるの?」

サウロは照れ臭そうに言った。

「えっ?勿論・・・ゴメン。やっぱり我慢できないや・・・・。」

口端を手で拭いながらサウロが言った。

「待てないのか・・・・はいっ出来たよ。サウロお待ち兼ねの夕食です。」

ジョイルは木の棒を焚き火から離し、サウロに手渡しながら言った。ところがサウロは、手の中に棒が入ると同時にがつがつと食べ始める。

その様子を見たジョイルは呆気にとられ、唯呆然と魚を口の中へと運ぶサウロを見ている。

「ゴホッ、ガハァツ、ゴホゴホ。」

何の前触れも無く、サウロが咽込み始めた。勿論、ジョイルはとても心配そうだ。

「・・・・大丈夫?」

ジョイルが言った。

「コホコホ。う・・・うん。大丈夫――。」

「本当に?それに、いくらお腹が空いているからって急ぎすぎだよ。」

「コホコホ、コホ。スー、ハー。よし――。」

そう言うとサウロは、呼吸を整えて眼を閉じた。しばらく眼を閉じた後、眼を開いてジョイルの方へと向ける。

「――飛ぶ練習をしようよ。」

サウロがジョイルの眼周辺を見ながら行った。

「う・・・うん。じゃあ。ちょっと前に飛んだ時みたいに空へ行ってみて?サウロはもう飛べたのだから――。」

羨ましそうにサウロの翼を見ながら言った。

「オーケイ。」

そう一言返事をすると、サウロは空に力強く上がっていく。

そして太陽光が眩しいほどの遥か上空にサウロは来ると、自分の翼の羽に異変を感じた。

その異変とは自分の羽根が焼けるように熱いのだ。さらに自体は悪化してようだ。なんと、羽先から細長く白いものが上がっている。

「う・・・うそ?!もしかして燃え始めた?煙上がって――。」

 そう。サウロの羽先から出ている白いものは太陽に近づき過ぎた為に、燃え始めた羽先から出ている煙だったのだ。

 煙に気が付いたサウロは急転換し、地上にある湖へ隼のごとく急降下し始めた。

バッシャーン!!

サウロは、湖の水が全て外へ出てしまいそうな勢いで着水した。

そして、隼の如く湖へやって来たサウロの元へとジョイルは駆け足でやって来た。

「どうしたの?上で何かあったの?」

ジョイルが言った。

「嫌・・・何も無かったよ。うん。大丈夫。」

サウロが湖から上がりながら心配顔のジョイルに素っ気無く言った。

「・・・・何も無かったんだ。なら良いけど――。」

ジョイルが呟くように言った。

「ジョイルはいつまでココに居るの?」

サウロが突拍子も無く言った。

「うーん・・・・サウロが記憶を取り戻すまで――かな。」

「本当!?」

「うん。こんな大事な事を嘘付いてどうするの?」

「まぁそうだね――有難う。」


その夜、ジョイルは何故だか理由は分からないが眼が覚めた。

「サ・・・・サウロ!?」

「・・・・・・・・・」

「サウロなんでしょ?黙ってないで返事してよ!」

ジョイルは少し苛立ちながら言った。

「うん・・・・・サウロだよ。」

目に少し涙を溜めながらサウロが言った――しかし、ジョイルからは暗くてサウロが涙目だということに気が付かない――。

「こんな・・・夜遅くに、どうしたの?」

サウロが涙を拭いながら言った。

「サウロこそ何故こんな時間に起きているの?」

ジョイルは火種の燻(クスブ)っている薪に火を点け様としながら言った。

「それは・・・――。ジョイル、灯りを点けないで!」

サウロが行き成り口調を強くしたのでジョイルは驚いた。しかし、サウロの言う事は気にせずに灯りを点けた。

「サッ、サウロ!?」

「だから点けるなと言ったでしょ・・・。」

サウロが星の輝いている空を見上げながら言った。

「つ・・・翼の羽が抜けていく。どうしたの!?」

先ほどのサウロ程ではないが、声を荒げてジョイルが言った。しかし、サウロは黙ったままジョイルに背中を向けた。

そして次に、サウロからしゃくり声が聞こえてきた。

「どっ・・・どうして泣いているの?翼の羽が抜けていくのを悲しんでいるの?」

「そんな、ひっく、訳、じゃない・・・。」

「じゃあ何故泣いているの?」

「それは、言え、ない。」

そう言うと、サウロはジョイルの方へ向き直った。そして、今までジョイルに見せた事のなかったクシャクシャな顔をしている。

そんなサウロを唯見ているジョイルは何をして良いのかオロオロしている。

「今までの事は一生忘れないよ。」

眼から垂れている涙を、手の甲で拭いながらサウロが言った。

「そんな、お別れをするような事・・・言わないでよ。」

ジョイルはサウロが何故、そのような事を言ったかが頭に浮かんだのでそう言った。

「うん・・・・ゴメン。多分、ジョイルの頭に浮かんだ事は当たっている・・・・と、思うよ。」

サウロがそう言い終ると、翼の羽根が全て地面に落ちた。

「え!?ウソ・・・だよ、ね?」

ジョイルが信じられないといった風にサウロへ聞いた。しかし、サウロは首を横には振らずに小さく縦へ首を動かした。

「僕は多分、消えちゃうんだ・・・。」

サウロが悲しげに言った。そして、足からスゥ〜ッとサウロの足が透けていく。

「い、嫌だ。消えないで!」

その様な事を言ったジョイルを嘲るかのようにサウロの胴が透けていく。そして、手の指先、手首、最後には腕も透けていく。

「サウロ、君の事は忘れない。大人になっても、この島が無くなっても――。」

ジョイルの眼には大きな水溜りが出来ていて、今にも溢れそうだ。

「うん、分かった。僕も消えたとしても忘れない。約束しよう――。」

サウロは腕が透けてしまっているので指切りはせず、お互いの目線を瞳へ合わせる。

「一生の、約束・・・」

ジョイルは呟くと、少しだけ目線を逸らす。

「僕と一緒に過ごしてくれて、僕を見捨てないでくれて・・・・アリガトウ。」

そう言うと言い終わると地面に散らばっていた黄色い羽根がフワッと飛び上がり、サウロの周りを飛び回り始める。

そして一陣の突風が吹いたかと思うとジョイルの目の前から居なくなっていた。

そして、ジョイルは堰が切れたようにその場に泣き崩れた。


サウロとの別れから十年後、ジョイルは逞(タクマ)しい青年へと成長していた。

そんなジョイルは今、サウロとの思い出が詰まったオアシスにいつの間にか来ていた。

「サウロ・・・・。君との約束は絶対に守るから。」

ジョイルはそう言うと、砂と草の混ざった地面を見た。

その時、

「ピーピョロピョロ。」

と云う鳶(トビ)の鳴き声が何処からともなく聞こえてきた。

                      〈終〉


−−後書き−−

最後までお読み頂き、有難う御座います。
文章が可笑しい所もありますが、
その事についてはご勘弁ください。
そして言い訳がましいですが、
中学三年生の時に作成したモノです////
休み時間などの時間がある時にコツコツ書いていました。
しかしいつの間にか原稿の一部をなくしてしまったので、
ほとんどがアドリヴ(?)な状態です。
勿論無修正ですね(苦笑
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この話のモデルはありません。
全て著者脳内での空想上の登場人物・地名です。

また他サイト様等への(一部を含む)無断転載は、
固く禁止とさせて頂きます。

筆者:Wing.B.Evans


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